人生音と共にあり ①
私の人生は音楽と共にあると言っても過言ではない。
1番古い音楽の記憶はまだ小学校低学年だった頃、母親の車の中で聞いた絢香の"I believe"だ。
冬のとても寒い日だった。雪がよく積もっていたのを覚えている。
家の中はストーブをつけていて暖かいはずなのに父と母が喧嘩する声で外からの隙間風が吹きつけているような、そんな感じがした。
イライラした父親が妹のおもちゃを投げた。
妹が声を上げて泣いた。
私も怖くて涙が出た。
母親が『もう無理、出て行く。』と言い放ち、私と妹の手を強引に引き、私と妹と母、3人で車に乗り込んだ。
車に乗り込むや、『おじいちゃんちに行くよ。』とだけ告げられ、雪が降りしきる夜道を車で走った。
妹は泣き疲れて眠ってしまった。
私はこの一連の流れがよくわからず、怖くてずっとメソメソしていた。
家から少し離れたところで車の暖房が効いてきて、その上絢香の"I believe"が流れてきたのだ。温かさとゆったりした曲調で私もメソメソしながら眠くなってきた。
音楽を聴きながら、どうなるんだろう…。と微睡んでいたその時だった。
母の口から『ごめんね………』と言う言葉がポツリと漏れた気がした。
その時の悲しいような、不安だけどどこかホッとしたような、うまく言葉に表せない気持ちは今でも忘れられない。
寒い冬の日が来るといつもそのことを思い出す。
だから私は冬が好きだけど冬が嫌いだ。